それにしても、やはりケン・リュウの描く世界の大テーマはは『死の克服』なんだね。【母の記憶に】は直接的に不治の病から命を引き伸ばしている。【ウスリー羆】や【良い狩りを】では身体の死と、古の魔力の死をスチームパンクな方法で克服している。【紙の動物園】では老虎が死を越えて愛情を伝える。【円弧】や【波】ではハッキリと科学的に死を乗り越えているし…本人が語っている通り、シンギュラリティと死の克服は大テーマなんだろなぁ
幼い娘を遺して死ぬのは悲しいことだけど、娘に歳を追い越されて、死ぬときまで見つめることになるってのは…なんとも不思議な気分よね。一緒に過ごした時間の長さが絆を生むとはいえ…時を超えてまで娘に会い続ける母親の愛って、それはそれで深いと思ったり。
地球外で遠い過去に滅んだ高度な文明を持った生命体がいて、彼らが遺した過去の叙情詩は、実際には単なる税法の記述に過ぎなかった!とゆーオチでして。まぁ、数百万年というスパンで見て長く保存されるものは石版とか陶器であって、我々の記録媒体は朽ちてなくなってしまう…というのはよくある話なんだけど…。叙情詩だと思って曖昧な翻訳と肉付けをしてきた考古学者は、最後まで正しい事実を受け容れられず…ぐぬぬーん、って感じ。
ちなみに経済学部卒としては、主人公(公認会計士の卵)におもいっくそ肩入れしますね。税を知れば社会が分かる、ほんとにそうだと思う。ケン自身が弁護士であり、法に明るいことがうまく作用している作品なんじゃないかなぁ。