妹エクスプロイト
http://ncode.syosetu.com/n9428dl/ 「んっ……お兄ちゃん……もう、だめっ……」
妹の口から小さな声が漏れる。
「見て……オーバーフローしちゃった……」
見れば、彼女のバッファは確かにオーバーフローしていた。
「お前のここはすぐ溢れちゃうなぁ」
「だってぇ、お兄ちゃんの|入力《指》が長すぎるんだよぉ……」
それはそうだ。長い入力でバッファをオーバーフローさせ、周辺の領域を同じ|値《液》で塗り潰す。それによって、注入の位置に多少のズレがあっても目的の場所まで滑ってうまくいくようになるのだ。
「よし、じゃあ準備もできたし本番いこうか」
「また|chroot《コンドーム》しないの……?」
「大丈夫だっ、て」
奥の奥、普通であれば決して外には露出しない領域へと、ポインタを一気に進めた。
「やっ、急に、やめ、ひゃんっ」
妹の反応が日常と変わってしまうのも自然なこと、そしていつものことだ。ポインタを進めては戻し、また進め、巧みなアルゴリズムで妹を暴走へと導く。
「そこ、らめぇ、おかひくなっひゃう!」
そろそろ仕上げといこう。ポインタを一気に奥まで押し進め、本来書き換えられるはずのなかった場所、彼女の最も脆弱な領域へと自身のペイロードを|インジェクト《注入》していく。
「今度こそforkしろ!」
「あ、ああぁーー!!」
ドクドクと、帯域の限界に達する速度でペイロードを送り出した。
インジェクションを終えれば、あとは様子見だ。妹と繋がったまま、様子を観察する。
「調子はどうだ?」
「もう、本当に|forkし《子ができ》ちゃったらどうするの!」
「今までだって大丈夫だったろ」
「そうは言っても! |abort《中絶》なんて絶対許さないんだからね!」
「大丈夫、その時は|exec《成人》するまでは責任持って面倒見るさ」
「もう……」
妹は照れたように顔を赤らめた。確かに、外部から子プロセスを作られてしまうなんて、プログラムとしては恥もいいところである。しかし実際のところ、forkしてしまったって、何の問題もないのだ。
——ここはそれを確認するための|仮想環境《セカイ》だからな。